今2回目を読み返しているところです。
しかしまあ偉そうに紹介してみましょう。
戦場カメラマンの一ノ瀬泰造の日記や手紙を編集した本です。
時は1970年代、ベトナム戦争のただなかで泰造は戦場カメラマンを志します。
ただし、かれが目指したのはカンボジアのアンコールワットでした。
軍事上重要性のないアンコールワットは、報道関係者から注目されていませんでしたが、泰造はアンコールワットの写真をクメールルージュ(ポルポト派)と一緒に撮ればスクープになると思って、シェムリアップでずっとチャンスをうかがいます。
この本なにがすごいかというと、やっぱりタイトル通り、『地雷を踏んだらサヨウナラ』っていう覚悟がそのまんまあらわれているところです。
カンボジア人がみんな「危ないからやめとけー」といっても泰造は聞かずにアンコールワットに突っ走ろうとします。
しかも、その当時アンコールワットの写真がどれほどの価値があるものなのかもいまいち微妙なのです。
こうなると意地でしかないですね。
こんな生と死のはざまにいながらも、泰造の日記はとってもコミカルです。日記は途中で終わっていますが、その後泰造がクメールルージュにつかまって殺されたことなど信じられないような、本当に明るい日記です。
おもしろいエピソードがあります。
泰造がカンボジア政府軍に従軍した時の話です。
政府軍兵士も共産軍兵士も昼ごはんの時間になると暗黙の了解で攻撃をピタッとやめるそうです。もちろんご飯を食べて昼寝をしたら殺し合いは再開します。
その昼ごはんの時間に政府軍兵士が遠くに見える共産軍兵士に言いました。
「こっちでメシ食いにこいや」
「いや、おめーこそこっちこいや。ウィスキーもあるで」
「ヘネシーウィスキーならいくぞ」
「いや、安いカンボジアンウィスキーだ」
で、両軍とも大爆笑。
ここのくだりが、小林秀雄が『無常ということ』で書いていた『平家物語』の、無邪気な戦争の笑いを思い出します。
戦争なんて実際はそんな楽しいものではないんでしょうが、それをどう感じるか、どう表現するかでどんな世界も変わっていくんじゃないでしょうか。
そういう意味でもこの泰造の日記は秀逸です。
単なる甘っちょろいヒューマニズムから戦争を反対しようとしているわけではなく、泰造はよくも悪くも自分の目で世界を見つめているのです。
人生を笑い飛ばし、世界を笑い飛ばそうとする彼の気概には、アウトローの僕としては少なからず共感せざるを得ません。
PS.開高健が寄せている序文もめちゃめちゃかっこいいので開高ファンも必読です。
ちなみに僕は見てませんが映画もあるそうです。
(って、ひどい紹介ですね・・・)
ラベル:一ノ瀬泰造 地雷を踏んだらサヨウナラ
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