2009年01月21日

竜馬がゆく 坂本竜馬はなにがえらいのか?

司馬遼太郎の代表作『竜馬がゆく』について。

11月ぐらいから日本で読み始め、1月8日にベトナムに旅立つ前にはまさか読み終わっているだろうなと目星をつけていましたが、最終巻を読み終わったのはハノイへ行く途中の経由のソウルの空港ででした。

お断りしておきますが、つまらないとか読むのがつらいわけじゃなくて、単純に全8巻だから長いのと、僕の読書スピードが遅すぎるのです。

この小説にトライしたのは2回目ですが、読破したのは初めてです。
最初にトライしたのは、たしか高校生か中学生の時だったと思います。
そのころは司馬遼太郎の『燃えよ剣』とか『項羽と劉邦』とか、剣術、戦闘組織をメインテーマにしたのが好きでした。
『竜馬がゆく』は前半はそんな感じで、竜馬が北辰一刀流の免許皆伝になるまでの剣術話が多く、前者の流れで読めました。

しかし、後半になると竜馬自身剣術に対する興味を失っていくので、そういう話がなくなっていき、若いころの僕もそこらへんで読むのをストップしてしまいました。

今回はさすがにそれから十数年たったので僕の読書力も成長して、後半の維新活動、海援隊の活動、竜馬の国家観にこの小説の魅力があるということがわかりました。

さて、突然ですが坂本竜馬は何がえらいのでしょうか?
僕はそれが昔からわからず、どういうポイントでもって竜馬の小説を読めばいいのかよくわかりませんでした。
たとえば、『燃えよ剣』だったら土方歳三が新撰組という最強組織をいかに作ったか、そして悲劇のヒーローとしていかに函館で散ったかという物語性がよくわかります。

それに引き替え、坂本竜馬ってなにをしたのでしょうか?
@海援隊をつくった
A大政奉還を裏で立案した
B薩長同盟締結

歴史の教科書に記録するとしたらこんなところでしょう。
しかし@にしても海援隊が実際倒幕に役立ったわけではないし、Aにしても竜馬は裏方で、あくまでも大政奉還を決断したのは徳川慶喜です。Bも状況がわからなければ「ふーん、そうなんだ」でおわりそうな話に思えてしまいます。
どうも日本史の教科書の中で竜馬はパッとしないのです。
しかし、名前だけは有名で世の中に竜馬信者はごまんといます。

僕が今回『竜馬がゆく』をちゃんと最後まで読んで思ったのは、竜馬のえらさはやったこと自体にあるのではなくて、彼の思想と調整能力にあるんじゃないかと思いました。

司馬遼太郎が指摘する、竜馬が当時の他の維新志士と比べてすぐれている点は、倒幕後の国家観を明確にもっていたことです。
西郷隆盛など薩摩勢は倒幕の方法論については優れていても、倒幕後の国家観は持っていなかったといいます。むしろ、戦国時代のように、徳川幕府を倒して、次の大名が天下をとるようなイメージでいたそうです。
アメリカの民主主義について独習し、万国公法も理解した竜馬は日本の法治国家観を誰よりも早く構想していました。
それは、竜馬自身が公表したり明治政府の文書にしたりはできませんでしたが、竜馬の影響を受けた薩長土の志士たちが明治政府を作る時の礎にしました。

しかし、僕はこういう政治面は竜馬のいちばんの本質ではないと思います。アメリカを模範とする法治国家論は、留学生が増えるうちに竜馬がいなくてもいつかは形作られていたんじゃないかと思います。

彼の特質で一番すごいのは、利害関係の調整能力です。
たとえば、禁門の変で薩摩軍に大敗した長州は、因縁の薩摩と手を結ぶなどそうそうできません。
しかし、反幕、倒幕ということで薩長の利害は一致しているのです。
竜馬は経済の観点から、薩長の同盟を結ばせようとします。

薩摩は長州を武器や軍事などで支援し、長州は凶作にあえぐ薩摩に米をおくるなど、貸し借り無しの経済関係をうまく誘導し、未来の倒幕共闘のために、経済から過去を止揚させるのです。

この方法論は、現在の中東問題とか、日中歴史観とかそういったものを解決するための唯一の方法論でもあるような気がします。
たとえば、イスラエルもパレスチナ(ハマス)もどっちもお互いを殺戮しているのですから、もう感情的には修復不可能な歴史を抱えていると思います。
それは、竜馬のころの薩長もおなじです。
薩長は倒幕というより大きな目的のために、修復不可能な歴史を超克しました。
イスラエルとパレスチナの問題も本来アメリカが坂本竜馬にならなければならないのです。
それは、経済、すなわち庶民の生活レベルから政治を動かし、利害の関係性を充実させ、より大いなる未来のために過去を止揚するという方法での外部の仲介のことです。

今までのアメリカ大統領はみな中東問題に口をはさむ割には、全面解決に至りませんでした。今回オバマが大統領になって盛り上がっていますが、アメリカが本当に世界平和を志向するのであれば、オバマが坂本竜馬になれるかどうか、そこが注目のポイントかもしれません。

もちろん竜馬は大統領じゃないし、自分が権力になることの危機をよく知っていました。しかし、竜馬の和平仲介方法論は普遍性を帯びているし、いかなる「関係」の考察においても参考にできるものだと思います。

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[タイトル] 竜馬がゆく〈1〉 (文春文庫)
[著者] 司馬 遼太郎
[種類] 文庫
[発売日] 1998-09
[出版社] 文藝春秋

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posted by →hiroyoshi at 20:11| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なんと。
自分も丁度今読んでまして最終巻まで来ました。
新政府ができたら引退して海外で活躍するとか考え方が
もうおかしい。幕末の考えじゃない。
今政事を執ったらどうなるんでしょうねぇ。
Posted by しか at 2009年01月22日 02:03
お、意外なところでしかのコメント!
竜馬は常に次のステップのことを考えていて向上心があるから、現実を乗り越える力もでてくるんだろうね。
お互い見習いましょう!
Posted by ひろよし at 2009年01月22日 02:57
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